大分キヤノンの派遣切りについて。

引用:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/64784
大分キヤノン 請負従業員削減「経営のツケ」 労組が雇用維持要請
 約1100人の請負従業員の削減見通しが明らかになった大分キヤノン大分県国東市)で10日、同社の請負従業員でつくる「労働組合日研総業ユニオン大分キヤノン分会」や支援団体の代表たち7人が、雇用の確保と住まいの保障を求める申し入れを行った。請負従業員側は「生産見通しを誤った経営陣のツケを私たちに押し付けるのは納得いかない」と経営責任に言及。大分キヤノン側は正門の外で社員5人が応対。申し入れ書を手渡されたが、「預かるが回答するかどうか分からない」と述べるにとどまった。

引用終わり

数年前に大分キヤノンで働いていた俺様がちょっと通りますよ。

前職は某大企業の社員だったんだ。まあ酷いスーダラ社員だったけど鬱病を得てね不要な人材とされたらしい。リストラされた。

当時はタケナカ構造改革が始まった頃だ。銀行が経営に口を挟む様になった。それにつれて製造業の現場も劇的に変化していった。まず、製造の現場に派遣が入ってきた。それまで社員が製造ラインに入って、いわば職人の梁山泊の様な現場に、全くの素人さんが入って来た。若い人がトラブルを起こす激増した。また「研修」と言う名のブラジル人もいっぱい入って来た。彼らは驚く程低賃金だった。まず、不良率が大幅に上がった。日本語が“通じない”日本人とか日本語も英語も通じないブラジル人とかを現場や品証、製造技術部門は相手をせざるを得ない。詳細な製造マニュアルが3カ国語、4カ国語で作られた。寝る時間が無くなる程派遣を受け入れる体制作りに追われたそうだ。
問題は品質とか不良とコストとかそれだけでは無い。
治安がものすごく悪化したのだ。
まず、それまで10年勤めた社内は「物がなくなる。」事など全くと言って良いほど無かった。社内で落とし物しても殆どの場合は戻って来た。それが頻繁に物がなくなる様になった。ノートパソコン、小銭、鞄、などなど。一度はフロアごとデスクトップのPCが無くなった。
それは社内だけではない。会社の駐車場を含め市域の治安が極端に悪化した。まずは自動車が荒らされる様になった。ダッシュボードの小銭ほしさにガラスをぶち破るのだ。一斉に自動販売機が撤去された。ひと夜のうちに破られるからだ。自警団がパトロールし駐車場には監視カメラが設置された。街には外国人向けの食料品店が出来て賑わいを見せる。エスニックフードが好きな俺にはこれは歓迎だ。子供と女性は夜出歩く事が無くなった。
会社の寮の隣が食品工場で外国人労働者最低賃金かそれ以下で働いていた。彼らと話す機会があったが皆家族をかかえて必死だった。一銭でもお金を残すためにぎりぎりまで生活費を切り詰めていた。“清貧”とうい文字通りだった。
かといってそこの経営者が儲かっているわけでも無かった。なぜなら彼の受け取る単価も極端に切り下げられているからだ。街には開き商店や売り家、開き工場が目立つ様になった。
そうこうしているうちに正社員の大粛正の嵐が吹き荒れた。まずはその会社ではめったにいない高い偏差値レベルの新人達や中途が採用される。彼らに業務を引き継いで暫くすると、
長年勤めた社員達に大粛正の嵐が吹き荒れた。
ある人は毎日草むしりやペンキ塗りである。中年の昨日まで第一線の管理職やエンジニア達が手のひらを返した様に冷遇された。彼らがこれまで会社を築き上げどんな思いで支えて来たかを知る物には目を剥く様な光景だった。様々な退職強要がされた。今なら絶対パワハラで訴えられているだろう。彼らは地域清掃中というゼッケンをつけてシャッターだらけの地元商店街のゴミ拾いをさせられた。
生き残ってスキルのある人は海外の企業に拾われ、そうでない人は石もて追われる様に去っていった。(俺もその一人、自己責任て言えば自己責任だけど前の職場を追い出され(ごねて暴れたので退職金は3倍ふんだくったけど)
)そして残ったのは、「不良品の山」と「4カ国語(英語、スペイン、ポルトガルそれと“簡単な日本語”)に翻訳された作業マニュアル」と「生き残った正社員の100時間を超えるサービス残業」であった。(この作業マニュアルは後に中国語が追加される。)言葉すら通じない。「物を丁寧に扱う。」とか「いきなり職場から逃走しない。」とか常識以前の問題が起き始めた。
彼らは作業マニュアルも常識も無視して異常に大量の不良品の山をつくりあげて「これだけ成果をあげたから給料をあげろ。」と要求するのだ。
このようにアグレッシブな外国人はまだいい。「常識」を教育すればいいからだ。(言葉の壁は高いが…)
高校からいきなり偽装請負の派遣で現場に放りこまれた若いフリーター達は哀れであった。なにせ「社会人としての教育」を一切受ける機会がなく、ただ搾取されるだけの「生きる部品」であった。低賃金で生きていくのが精一杯であった。挨拶はおろかいきなり欠勤する、職場を放棄する。決まり事を覚えない。社会常識を一切教育されていなかった。数字しか見ない管理職は安い単価で人材という材料を調達し運用が末端にしわ寄せが来た。
彼らを教育する余裕などなくただ使い捨てするより方法が無かった。管理部門も労働条件に文句を言う彼らを、「派遣会社に言ってください。」と追い返すほか無かった。
多くの元同僚が壊れていき不幸な若者と不幸な外国人労働者ばかりとなった。
会社は過去最高益を記録した。
その元職場はどうなったか?
一部の開発と管理部門を除き誰もいなくなった。不幸な若者も外国人労働者もいなくなった。
ものけのからである。昨今の不況はもとより生産自体が海外にシフトした。設備備品は輸出され、工場はモノケのからになった。街はゴーストタウンになり商店街は寂れ、パチンコ屋さえつぶれていった。昭和初期の農業だけの街になった。泥棒さえいなくなった。

それで今は地元のパート労働者を俺はやっている。

以前、大分キヤノンでちょっとバイトやった事ある。作業請負会社を通じてだ。
仕事は50秒あたりで1台の生産作業をこなす。一日400台なら400台のノルマがある。1ラインを一つの作業請負会社が請け負う。
とにかく大変な労働である。まず作業マニュアルを頭にたたき込む。それはなんとか頭でやることなので出来る。だが実際の作業は体がついて行かない。脳内の処理に体が反応しない。ネジを締めるにしても若者のスピードには完全についていけない。「お前ら、100メートル10秒台で走れますか?」気合いでも根性でも無駄である。ガキの頃から運動オンチの俺にはタイヘンな事である。
それでもなんとかこなしていたが、ラインで流れる機種が変わり、要求されるスピードや作業項目についていけなくなるとあっさりとクビになった。
さりとて俺をクビにした“作業請負会社を”さして「不当」だとは思っていない。作業請負会社も「不当」に「搾取」されているからだ。
作業請負は工場のスペースのレンタル代、電気代、工具代、製品の部品代から払う。もちろん人に関するコスト全ても。本来は生産する企業が負担すべき殆ど全てのコストを請け負い会社は負担する。企業はコストもリスクも請負会社に丸投げするわけである。それだけではない。
たとえばノルマが8時間の1シフトで400台デジカメを生産するとしよう。そこで399台しか生産出来なかったとする。その場合一切請け負い会社に報酬は一切支払われない。ゼロ。全くのただ働きで生産に関するコストは請負会社が企業に支払う事になる。それなので、どうしても間に合わない時は企業の正社員から廻りにいる人から一致団結して休憩時間を返上してノルマを達成させた。

ところでそんな請負会社や派遣で戦力になるのは若い人だと思われるだろう。だが実際はそうでもない。職場に定着し実際に戦力になるのは案外「オヤジ」世代である。
前に勤めていた大企業をクビになったときからでもそうだった。若い人は実に「教育を受けていない。」人が多いのである。「教育を受けていない。」とは別に学歴が低いとか、学校に行っていないとか、漢字が読めないとか、因数分解が出来ないとかではない。先に書いた様に社会人として当然というべき事が出来ていない、突然バックレたりする。理解できていないのである。というか知らない、だれも一度は教わる事を教わっていいないのである。
であるから安定して働きその場の状況を考え、また先を読んで行動できるのはオヤジが多い事になり、オヤジが主戦力になってしまう訳だ。
かわいそうなのは若者達だ。スポイルされたまま、肉体を持つ機械として使い捨てなのだ。文字通り。

キヤノントヨタに代表される企業社会は国民や国家の内部留保を切り崩して利益に替える。それは個人の預金残高だけではない。
人的資源、昔は社会全体で育てていた人的資源さえどん欲に切り崩していく。投資をせずに利益だけを追求している。社会の安全とか年金とかセーフティーネットさえ切り崩す。老人医療を、障害者の年金を福祉を切り崩す。人の幸福を切り崩して利益をあげる。地域社会を疲弊して企業は生き残る。その富みがグローバルスタンダードの名の下にどこかに消えていく。

福祉を切り捨てとか言うとすぐに「財源を示さないのは無責任」だのどううの言う輩が出てくるが、そいつらには声を大にしていいたい。
「そんなもん、糞喰らえだ。」
これ以上全体も個人も企業社会に骨身を削られたら全体が音をたてて崩壊するであろう。
俺は無学な新聞配達だ。
えらい学者やビジネスマンのエリート諸君が見れば穴が多すぎる駄文、具体的な数字さえ示していない妄想に過ぎないかもしれない。
でも、俺には貴方の背中が見える。
いいかげんにしないと次々と後ろから人が刺される社会になるであろう。
次はあなたのばんかもしれないな。

ああ、読み返すの面倒だ、そのままアップしよう。