ユーザーにボタンを押させるな。

私は新聞屋の雑用係である。あなたが朝起きたら新聞がポストに入ってなかったのでクレームの電話をかけたとする。そこで頭を掻きながら愛想笑いを浮かべた貧相なおっさんが謝罪にやってくる。それが私だ。

よって様々なお客様の電話を受ける事になるが困ることもある。
もとよりこの地域というか地方だからなのだろうか、配る人もお客様もお年寄りが多い。
このお年寄りのお客様は言語が不明瞭である。「田中」だと思えば「畑中」だったり、「西」だとおもえば「大石」さんだったりする。
また、いくらお客様でも「田中」さんは10数件あるのでどこの田中さんだか言ってくれないと非常に困る。なので町名と番地はまず訊くことにしている。経験があるので何処の人かはだいたい解るので「○○病院の裏の田中さんですね?」と確認はできるが、たまに勘違いとか聞き違いを防ぐ為にもそうしてる。
もっとも自分も24時間電話番している訳では無いので営業時外は留守番電話にしている。留守番電話だとお客様は大概ガチャ切りされる。面倒だと言うのもわかるが、「留守番電話」を嫌うというか対応できないお年寄りが多いのである。
自分の父親がそうである。まず、人間が電話に出ない事が無礼だと思っている。それに「機械に言われた通りに操作する。」と言うことが出来ない。つまり「対話型インターフェース」というコンセプトが理解出来ない。であるからつい最近までATMの操作ができなかった。銀行では出金伝票で金をおろしていた。
一度留守番電話を自宅で作動させたところ父は「電気でピーピー言わして電話を壊した。」と烈火の如く怒った。それ以降うちの留守電機能はつかわれていない。
そんなんで知り合いの年寄りからチケットの電話予約とか問い合わせとかの電話をする簡単なお仕事を依頼されることがある。企業担当者よ、大事なことだ、ユーザーに考えさせて電話機のボタンを押させるな。おれでもストレスだし、人によっては車いすの階段のような障壁になる。
文系人間、理系人間という事もあろう。俺はマニュアルの類は従来の1から10まで微に入り細に入りの詳しい列記型のマニュアルの方が読みやすい。階層構造なのでたどって行けば必要な情報にたどり着きやすい。だが母とか他の人は違うらしい。こうしたいときはこうする見たいな、「イベントドリブン」式のマニュアルが読みやすいらしい。原理が解ればあとはマニュアルとか無くても済むのでそれが楽なのにな…。
新聞屋の仕事て完全に「人間のインターフェース」の仕事である。超アナログ、お客様や天気や曜日や季節やみんなの体調とか気分とか合わせて段取りとか配達とか色々します。
単純な仕事の様で結構気をつかってますよ。